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スローライフな南信州

◆スローフードからスローライフへ      
1986年、マクドナルドがイタリアに進出し、ローマのスペイン広場に1号店を開いたが、アメリカ資本のファストフード店に対する反発は大きく、この際に起こった反対運動が、伝統的な食文化を評価するスローフード運動に発展した。1989年にはスローフード運動の国際化が行われた。      
日本では1999年春に日本スローフード協会が設立されまた同年にカゴメがパスタソース「アンナマンマ」のCMメッセージで「スローフードに帰ろう」を使い、2000年より島村菜津が自著でスローフードを広め、またいつからか環境ファッションマガジン『ソトコト』もスローフードを取り上げるようになっていった。    
やがて食文化のみでなく、生活様式全般やまちづくりを見直す動きに広がった。         
◆日本におけるスローライフ     
日本で「スローライフ」という言葉が使われるようになったのは2001年頃からである。川島正英(地域活性化研究所)や筑紫哲也(ジャーナリスト)らが「スローライフ」について模索していたところ、川島の話を聞いた掛川市の榛村純一市長が「スローライフシティー」を公約に掲げて再選を果たした(2001年)。2002年11月、掛川市で「スローライフ月間」が開かれ、12月のシンポジウム「スローライフのまち連合を結成しよう」には、掛川市、湖西市、岐阜市、多治見市(岐阜)、安塚町(新潟)、立川町(山形)、柳井市(山口)が参加した。 その後、「スローライフ月間」は各地で開催されるようになり、「ゆっくり、ゆったり、心ゆたかに」を掲げるスローライフ・ジャパン(川島正英理事長)が設立された。これをまちづくりに応用した思想は、「ニューアーバニズム」とも言われている。
  スローライフとは……フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)

南信州広域連合が2003年5月に発行した『南信州広域だより』に、「スローライフな南信州」が特集記事として掲載されています。上記のウイキペディアには「日本で「スローライフ」という言葉が使われるようになったのは2001年頃から」とあるので、冊子発刊と時節が合いますね。     
南信州にスローライフを探し表現した、20年以上前の企画。当時の時流が感じられます。さっそくみてみましょう。

まず導入ページに、冊子の企画趣旨が述べられています。     
「無駄を省き、明確な目的に最短で至ろうとする〝ファースト〟に対し、スローライフは人や自然やいろいろなものと関わり合いながら、一見無駄のようなものとも関係し、時間や手間をかけて目的に至ること」とし、「このプロセスそのものがスローライフ」としています。

1 農業・農村  農山村の暮らしに根づくスローライフ     
まずはスローライフを農業・農村に見出しています。そこは「時計が刻む均等な時間では計れない、季節や自然が刻む大きな時間が流れる生活空間」です。「地域の自然や身の回りのものを資源に、経験が培った知識や技術とつながり、一年という周期で循環する農村世界は、環境への負荷もなく、自然も農地も、そして人も元気でいられ」、「仕事の場と生活の場を分けるのでなく、その境界を曖昧にすることで、生産と生活、そして環境の維持が一体的に図られていく」といい、南信州の農業・農村はこのようなスローライフの魅力を備えているとしています。

2 郷土食  多様な食材が彩る 一年の食のスローライフ      
スローフードの風景に五平餅を挙げています。秋の収穫が終わると、昔は親戚衆が集まって、その年の新米を使って「五平餅会」が開かれました。大人たちは世間話にふけりながらゆっくり時間をかけて五平餅をつくり、子どもたちは味噌の焦げるおいしそうな匂いにワクワクしたものです。この食の流儀こそは、スローフードの原風景ですね。
南信州には地産地消、そして栽培から消費・加工・保存と、無駄のない食の循環があるとまとめています。

3 内発的な技術  身の丈に合ったスローな技術の創造        
今ではほとんどみられなくなった「産業の地域内循環」にふれています。その筆頭がかつての養蚕・製糸業でしょう。南信州周辺の村が蚕を飼い、飯田周辺の製糸工場で生糸にし、そして飯田の商人が県外・海外に販売しました。「村でつくり、町で加工し、外に売る」という、理想的な産業の循環が南信州にはありました。比較的小さな経済圏のなかで成り立つ産業構造で、グローバルな産業資本主義以前の時代のことです。      
食とエネルギーと福祉は自給すべしと言われますが、この冊子でも「福祉や教育、環境保全などの分野で、地域に新たな仕組みをつくることが求められている。内発的な技術、人の身の丈に合ったスローな技術が、この課題に対し期待されてくるのでは」とまとめています。

4 住民参加  時間をかけた共同作業が 地域づくりの担い手を育てる      
住民参加をスローライフの一分野に挙げています。着目点が面白いですね。「住民と行政のパートナーシップによる地域づくりは取り組みが始まったばかり」としています。冊子にもあるように、福祉・子育て・教育など行政が担っていた分野にNPO組織などが参画するようになったのもこのころでした。      
住民参加は住民と行政の共同学習(つまり社会教育)的な面もあり、手間と時間がかかりますが、そのプロセスが地域事業そのものとしています。

5 豊かな生活圏  人はもっと、ゆっくり知り合っていけばよい        
ここでは総括として、以上みてきた4つのテーマに共通する特徴を挙げています。1点目は「関係性の豊かさ」。2点目はその関係性が多様で多彩である点。そして3点目は、この多様な関係性が、循環した世界をつくっている点です。「スローライフは多様なものが関わり合い、循環する生活世界」としています。     
冊子は最後に「ヒューマンスケールの生活圏」にふれています。①生産から消費まで、日常生活の大半が地域の中に充足し、美しい環境が保全されていく暮らし。②歩いて行ける範囲の中に、豊かさを実感できる生活の条件が見つけ出せる暮らし。③子どもからお年寄りまで、みんながそれぞれの形で地域に関わることのできる暮らし。④元気な地域の姿に人が集い、交歓の中から新しい文化を創造していける暮らし。

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