NHK大河ドラマ「光る君へ」のヒロインは、源氏物語の作者紫式部。源氏物語は光源氏の恋愛遍歴があやなす、世界最古の長編小説。物語は不遇の皇子・光源氏の恋の巡礼を主軸に展開するが、意外に詳細な食事シーンはお目にかかれない。はかなくも美しい恋物語には、どうも「食べる」行為は浅ましいと才媛紫式部は思ったか。では実際のところ、当時のやんごとなき方々は何を召し上がっておられたのだろう。
そこで、TAKARTの才媛・青山女史に登場願った。彼女は持ち前の行動力で文献を渉猟し、非凡なスキルを発揮して平安の食を現代に再現した。紫式部も清少納言も、かの藤原道長公も口にしたであろう食事を、写真と想像力でご試食いただきたい。
ネットで源氏物語の中に食事に関する場面がないか探していたら、以下のサイトに行き当たりました。 「常夏」の冒頭、光源氏が夕霧たちと六条院の釣殿で食事をするシーンが解説されています。 https://www.shikibunosato.com/f/monogatari31 こんなサイトもありました。源氏物語・若菜の宴の場面です。 https://www.shikibunosato.com/f/monogatari10 どうやら菓子は「果子」、つまり果実に由来するみたいですね。
①強飯(こわいい)
お米を甑(こしき)で蒸したかたいご飯で、器に山のように盛るのが通例でした。お米は尊いもので、神聖なお米には神様の力が宿ると考えられたのです。強飯はかたくて食べにくく、しだいにやわらかく炊いた「姫飯」が常食となりました。
②四種器(よぐさもの)
ご飯の周りには、醤(ひしお)、酢、塩、酒の4種の調味料皿が並び、四種器といいました。
③茄子の醤(ひしお)漬け
野菜は長持ちさせるために、塩や醤に漬けて保存しました。茄子は奈良時代に日本に伝わり、平安時代には「延喜式」に栽培法が載るほどの人気野菜でした。
④蒸しアワビ
高級食材のアワビが食されていたとは驚きです。アワビの代わりに長芋を使いました。
⑤ハマチの切り身
食材だけみると、「何と贅沢な」と思ってしまいます。でも調理法はシンプルで、アレンジも限られていたのでしょうね。
⑥カブのあつもの
「あつもの」とは熱い汁のこと。味付けは塩や醤で。味噌はまだ贅沢品でした。
⑦ゆでわかめ
平安京は海から遠く、当然食材は干したりして日持ちが効くものが使われました。
⑧唐菓子……米粉を練ってゆで、搗いて餅にし、中に餡を入れました。神様への献上品としても使われました。
⑨鰯……鰯は下級な魚と考えられていたようです。しかし紫式部は鰯が好きで、夫の留守中にこっそり焼いて食べたといわれています。
⑩椿(つばき)餅……ゆでて固めた米粉を椿の葉ではさみました。風趣あふれるお菓子です。
⑪蘇(そ)……牛乳を煮詰めてかためた高級嗜好品。ほんのり甘い「ミルキー」のような味がします。蘇を献上するために、各地に乳牛を飼う牧場がつくられていました。
平安貴族の食事は朝餉、夕餉の一日二食が基本でした。朝食が午前10時ころ、夕食は午後4時ころで、途中、菓子や餅などの間食を摂っていました。甘味がついた菓子は特に女官たちに人気だったようです。主食のお米は貴族も庶民も同じでした、お米は高価なため、庶民などは雑穀比率の高い食事を摂っていました。
庶民の食事は?
貴族は高さのあるお膳で食べていたのに対し、庶民は平たいお盆のようなもので摂っていました。ご飯に魚と野菜のおかずがつく「一汁二菜」が基本でしたが、中には一汁一菜で済ます貧しい人々もいました。
ご飯:白米は贅沢なことから、玄米にヒエやアワなどの雑穀を混ぜていました。
汁物:貴族は4種の調味料を使いましたが、庶民は主に塩のみで味付けしました。
塩鰯:鰯は手軽に手に入り、よく食べられていました。
カブの漬け物:カブはやせた土地でも育てやすく、早く生長するのでよく利用されました。
参考文献:食事から日本の歴史を調べる 第2巻 平安〜鎌倉~室町時代の食事(株式会社くもん出版)
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