調査日 2023年5月27日(土)晴れ
不動滝は高森町を代表する景勝地です。滝の上流は二つの沢にわかれており、この2本が不動滝でいっしょになって大島川が始まります。
不動滝には多くの人が訪れますが、その上流は知られていません。戦時中の食糧難の時代には、上流の平地を開墾してイモ(おそらくサツマイモ)をつくったといわれています。地図に「大平」と記されている場所です。
今回はかつて「滝の入」と呼ばれた不動滝の上流、この「大平」までを調査しました。コロナ禍の中断をはさんで約2年ぶりの調査は、史上もっとも過酷な道中となりました。
※今回はブラタカモリでナビゲートをお願いしている松島高根さんに道案内を依頼しました。
【不動滝の上へ】
調査隊一行は滝の傍らに祀られたお不動様に安全を祈願し、滝の上に出ました。滝上部は巨大な一枚岩。ところどころにポットホールが造られ、その上を清流が柔らかな布のように流れ下っています。
沢をわたり、かつて木材の搬出に使われた木馬道を進みました。
【森閑とした異形樹の森】
歩き始めてしばらくは道がしっかり残っており、楽に進めました。途中、「展望台」と書かれた表示板を目にしました。かつてはこんな山中に「展望台」があったのですね。
しかしやがて、ところどころで倒木が道をふさぎ、クマザサがうっとうしく感じられるようになりました。
調査隊が思わず見入ってしまったのは異形の巨木たちです。人の手で枝が伐られ、そこからひこばえが芽生え、さらに大きく生長した姿には長い年月、大きな時間が融けこみ、畏敬の念を感じます。
【見つけた! 出会った!】
小さな沢の一角に、花崗岩が粘土化した断層粘土を見つけました。写真の淡青色の部分が粘土層です。ここはちょうど前高森山断層が走っているところです。
人が生活した痕跡もありました。炭焼き小屋の石垣跡があり、その沢をはさんだ対岸には、斜面を削って平らにし山小屋を造った形跡が残っていました。
かわいいヤマドリのひなにも出会えました。記念撮影だけして手放すと、一目散に親鳥の方へ向かっていきました。木に刻まれた熊の爪痕も、数カ所で見かけました。
【大平へ 最後の直登】
目的地を間近に、厳しい通過儀礼が待っていました。背丈ほどのクマザサに覆われた急斜面の直登です。ここは写真を撮る余裕もありませんでした。
【クマザサとヒノキの大平】
不動滝を出発して2時間半、ついに目的地「大平」に到着しました。しかし、平坦な日だまりの別天地を想像していた一行には、あまりにも期待外れでした。現在の大平は人の背丈ほどのクマザサに一面覆われ、その中にヒノキが林立していました。
ここ大平は戦中のイモ栽培に代わり、戦後はカラマツが植林されました。しかし昭和50年の山火事で焼失してしまい、その後ヒノキが植えられたといいます。このヒノキもこんな山中でどうなるのでしょう。
心臓破りの直登も、帰路は下りのため、比較的楽に帰ることができました。翌日は脚の痛みと両腕の虫刺されに悩まされましたが、ハードな分、とても収穫の多い調査になりました。
①花崗岩の一枚岩。「千畳敷」と呼ばれる
②小さな滝、瀬、淵が連続する
③かつての「展望台」
④歩きやすい道が続く
⑤この辺からクマザサがうっとうしい
⑥斜面を削り平坦にした山小屋の形跡
⑦断層粘土
⑧炭焼小屋の石積み跡
⑨この一帯、異形樹の森が広がる
⑩クマザサの中を直登
⑪標高1520m。クマザサとヒノキの別天地「大平」
滝の入 異形樹図鑑
不動滝の上には、ヒノキ、ミズナラ、ブナ、トチ、カツラなどの異形樹の森が広がっていました。 異形は畏敬に通じます。深閑とした森で、長い時間を生きてきた異形の巨木に出会うと、畏敬を感じずにはいられません。
【調査を終えて】
往路:8:00不動滝発~10:30大平着
復路:11:00大平発~12:30不動滝着
◆ヤマヒルと熊には出会わずにすみましたが、山ダニは服に数匹付着していました。幸い刺されずにすみましたが。
◆決して独りでは行かないこと。もし山に入るなら、山歩きに慣れた地理に詳しい人に同行してもらいましょう。
◆不動滝の上の一枚岩はツルツル滑ります。滑って転んで流されたら大変。流れに入ってはいけません。
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